人手不足が深刻化する製造業の現状。その打開策とは

人手不足が深刻化する製造業の現状。その打開策とは

社会全体で労働力の不足が問題となるなか、産業の根幹とも言える製造業でも人材不足が深刻化しています。ものづくりの力が失われれば、日本経済にも大きな影響を及ぼすことでしょう。技術的な問題がからむ製造業では、ITやロボットなどのテクノロジーと熟練の技との融合が必要になってくるにつれて、人材不足の解消がさらに難しくなっています。今回は、人手不足が深刻化する製造業の現状を見ていくとともに、改善に向けて取り組めることとその可能性について考えていきます。

国の基幹産業としての製造業

日本の産業のなかで、製造業は重要な位置を占めています。国は製造業を支えるため、さまざまな施策を打ち出しています。

GDPに占める製造業の割合

経済産業省は、2017年の世界の実質GDPの約半数を占める4カ国(アメリカ、中国、日本、ドイツ)において、製造業が占める割合を開示しています。もっとも高いのは中国の40%、次いでドイツの24%、日本の22%となっています。日本の製造業は自動車産業に大きく依存しているものの、中国へのハイテク部品の輸出も下支えしています。この通り、今もなお日本における製造業の重要性は高い状態です。そのため、将来の製造業の在り方が、国家の経済戦略の重要な位置づけであることが分かります。

製造業における人手不足の現状

現在、日本全体が慢性的な人手不足に陥っています。主力産業とも言える製造業も同様です。最初に製造業の現場における人材不足の現状について見ていきます。

特に地方の中小企業で深刻化

製造業の大企業・中小企業に対して経済産業省が2018年に実施したアンケートでは、94%以上が人材確保に課題があるという回答を寄せています。さらに中小企業の約32%はビジネスにも影響が出ていると答えており、人材不足が産業全体に与える損失が懸念されています。

日本の若年労働人口が減少するなか、製造業全体も社員の高齢化が進んでおり熟練の従業員に頼っている状態です。この傾向は中小企業ほど大きく、「技能人材」の確保と技能の継承が難しい現状が浮き彫りになっています。

人材が不足する原因としては、製造業界に持たれるイメージの問題や都市部への労働力の集中があります。首都圏一極化が進むと、さまざまな職種が選べるなかで仕事が厳しい、重労働というイメージを持たれがちな製造現場での仕事への志向性が低くなります。こうした環境にあって、地方の中小企業ではさらに労働力の確保が困難となり、慢性的な人手不足は広がる一方です。

相次ぐ「人手不足倒産」

帝国データバンクが発表した調査によると、2018年の「人手不足倒産」は前年比44.3%増となっています。この調査の中では、製造業の前年比率はわずかに減少しているものの、依然として現場の人手不足感は消えていないのが現実です。

実際、製造業界は「人手不足倒産」調査で上位にランクインし続ける傾向にあります。特に中小製造業の雇用状況は、年々悪化しています。その理由として挙げられるのが、日本経済への先行き不安と人気業種の変化です。依然として雇用される側としては、少しでも将来的に経営の安定が期待できる就職先を望む気持ちが大きいと見られます。

一方で、景気の良い報道はWebなど非製造系が多くなってきました。中国のメーカーが日本市場でもシェアを伸ばしているなども相まって、マイナスイメージが先行している部分もありでしょう。そうした背景のもと、人手不足の影響は製造業、なかでも中小企業に大きな影を落としているのです。

製造業における人手不足を解決するには

製造業が抱える人手不足の課題と、その改善に向けた取り組みを見ていきましょう。

外国人労働者の受け入れ

国は外国人労働者の受け入れを拡大する施策を打ち出してきました。そうした動きにより、外国人労働者数は急激に増加しています。厚生労働省によると、2018年に外国人労働者の雇用数が過去最高を記録しており、業種別では製造業が最も多く約3割を占めています。

製造業での外国人労働者の内訳は、日系人などの身分に基づく在留資格を除くと「技能実習」が最も多い約16万人となっています。ただし、技能実習生については、やがて自国においてその産業分野で活躍する人材として扱わなければならないため、雇用するに当たっては人材確保と育成、両面のバランスが重要です。

政府は、新たな在留資格認定と試験を実施する方針を固めています。これにより在留期間の上限なし、家族帯同可といった在留資格上の措置を検討し、さらなる労働者雇用の拡大を視野に入れています。労働意欲の高い傾向にある外国人材を採用することで、人手不足を解消することも可能になりつつあると言えるでしょう。

「熟練の技」と技術の融合

日本の製造業の強みは、非常に高度化された職人の技術にありました。世界的に評価され、誇れる技術力は日本の宝でもあります。

しかし、熟練者を一気に増やすことは簡単ではありません。そこで、匠の技を活かしつつ生産性を向上していく必要が出てきます。そこで、熟練者でなければできない工程とシステマティックに進められる工程を見極め、最新技術を組み込んでいくことが1つの解決策になります。

業務効率化やオートメーション化につながる技術は日々磨かれています。それらを活用することで、高度な技術を持つ人材に頼る生産体制から転換ができる可能性があります。また、業務効率化によって生まれる時間を、後進の育成にあてることもできるでしょう。

強みである熟練の技を継承する余裕をつくるという意味でも、技術を取り入れることは有効だと言えるでしょう。

課題解決に向けた取り組み

製造現場での人材確保を急務とする中小企業のニーズをとらえた、「社外のシニア・ベテラン人材の採用強化」への取り組みが進んでいます。具体策としては、IT・データ分野を中心とした社会人向け講座が開催されており、在職者やミドル層、また子育てブランク世代に対するスキルアップの場が提供されています。

国では製造業における中小企業支援策として、「スマートものづくり応援隊」がスタートしました。製造業の未来の在り方を見据え、「ものづくり人材」に対してはITやIoTの教育機会を、「IT人材」に対してはものづくりの教育機会を提供するといった取り組みです。相互の理解を深めることにより、技術継承やテクノロジーの活用の促進を目指します。また中小企業におけるIoTやロボットなどの活用を含めた、業務改善活動への支援が順次実施されています。

早期に戦力として見込めるシニア・ベテラン人材の採用や、既存社員のレベルアップによって人手不足を補うことも可能だと言えます。

技術・助成金によるサポート

中小企業では「自動機やロボットによる自動化・省人化」への強い意向が多く見られます。それを受け、設備投資への助成の充実が図られています。また、専門実践型教育訓練給付の拡充といった、人材雇用対策に活用できる助成制度は多数見られます。

中小企業向けの人材関連助成金には、以下のようなものがあります。

  • 中小企業子育て支援助成金
  • 中小企業雇用安定化奨励金
  • 中小企業短時間労働者雇用管理改善等助成金
  • 中小企業雇用創出等能力開発助成金
  • 中小企業基盤人材確保助成金
  • 中小企業人材能力発揮奨励金
  • 中小企業人材確保推進事業助成金
  • 通年雇用奨励金
  • 地域雇用開発助成金

これらの助成金を上手に活用し、人材不足の解消に役立てられれば、製造業を足元から固めていくことができます。各企業が自社にできるやり方で、課題解決に向かう姿勢が今、求められています。

まとめ

製造業の現場が欲しいのは、単なる労働力ではなく「技能人材」です。雇用による人員の増強と同時に、育成を強化していかなければなりません。活用できる国の制度、外国人労働者の雇用について理解を深め、積極的な状況改善に努めていく必要があります。

参考: