技能実習生の雇用における単純労働の扱いは?

技能実習生の雇用における単純労働の扱いは?

近年特に一部の業界で人手不足が深刻化するなか、飲食業やコンビニエンスストア、製造業などのさまざまな現場で働く外国人を見かけるようになりました。これまで技能実習生に単純労働をさせることは禁止されていたはずですが、実際はどうなのでしょうか。また、禁止されているとしたら、その背景には一体どのような事情があるのでしょうか。意外とわからない実情を正しく理解するため、技能実習生と単純労働について整理して見ていきます。

単純労働とは?NGとされていた背景は?

これまでの外国人採用は、技能実習制度を活用していました。2017年1月に設立された認可法人「外国人技能実習機構(OTIT)」では技能実習制度について以下のように定義しています。

「我が国で培われた技能、技術または知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』に寄与することを目的として創設された制度 」

技能実習の枠組みで滞在している外国人は、日本で学んだ技能を母国に伝えることを本来の目的としています。しかし、企業に事実上の単純労働者として使われている実態もあり、問題視されてきました。

これまで国の方針として、単純労働分野における外国人の就労は禁止されていました。理由は、治安の悪化への懸念、外国人に仕事が奪われる懸念、文化の違いによる衝突ひいては社会不安のリスクの懸念などです。

実際のところ、単純労働とは学歴や特定の技術、経験がなくても行える、比較的簡単に誰でも実行可能な作業を指します。近年の日本において少子化傾向が影響し、そのような労働に従事する人材が不足してきたという事情があるのでしょう。

新たな在留資格「特定技能」

特定技能という新在留資格が、2019年4月1日から始まりました。これまで単純労働を対象にした在留資格はありませんでした。今回の改正出入国管理法で新設された「特定技能」が事実上初の、単純労働を許可する資格となったのです。

厚生労働省のホームページでは、特定技能について以下のように説明されています。

「中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため,生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において,一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するための法改正である」

単純労働を許可した「特定技能」とは?

技能の習得が目的の「技能実習制度」と違い、特定技能は人手不足の解消を念頭に置いた制度です。2020年現在、その業種は以下の14業種に限定されています。

・介護

・素形材産業

・ビルクリーニング

・電気・電子情報関連産業

・産業機械製造業

・建設

・造船・舶用工業

・航空

・自動車整備

・宿泊

・農業

・飲食料品製造業

・漁業

・外食業

特定技能制度において、在留資格は2種類あり、特定技能1号と特定技能2号と呼ばれます。特定技能1号は上記の14業種における「相当程度の知識または経験を要する技能」と認められる業務に従事するための在留資格で、日本語を日常会話レベルかつ業務を行ううえで必要な程度話すことを求められます。

 一方、特定技能2号は「熟練した技能」を要する外国人向けの在留資格です。特定技能1号と違い家族を帯同することが認められていますが、その対象は配偶者と子のみに限定されています。また、在留期間に上限が設定されていない点も特定技能1号と異なります。現在、特定技能2号は14業種のうちの「建築業」「造船・舶用工業」の2種類のみが対象です。

制度活用における注意点

特定技能制度においては、人手不足解消をその目的としているため単純労働と一般に呼ばれるような業務も対応可能となっています。しかし「業務に付随するものであれば可能」という制限があることに注意を払う必要があります。

また、技能実習制度との大きな違いも認識が必要です。技能実習生の場合、監理団体が実習生のサポートを行いますが、特定技能制度では登録支援機関または雇用先がサポートの責任を負います。また、技能実習制度と違い、特定技能制度では同一業界内での転職が認められています。

技能実習生関連の法令は、対象業種拡大の可能性も含めて注視していく必要があります。今後も人手不足の傾向が多くの業界で予測されているなか、制度もそれに対応して変わっていくでしょう。スタートして間もない技能実習制度ですが、まず人手不足の現場を中心に検討され、その後多くの企業によって制度の活用が進んでいくと思われます。

重要なことは、制度の活用にあたって正しい理解と運用を行なうことです。認識の間違いなどによりトラブルを起こすと、制度の利用ができなくなることもあります。人手が足りないから、安価な労働力だからと、制度を正しく理解せずに単純労働に従事させることのないよう、しっかり検討して活用していくことを心がけましょう。


参考: