労働力人口の減少は待ったなし?企業が今からするべき準備とは

日本の少子高齢化は、世界に類を見ないほどの速さで進行しています。すでに社会全体で労働力の不足が深刻化しつつありますが、少子高齢化が進むなか、今後も労働力人口の減少は回復が見込めないといわれています。静かに、しかし確実に労働力が失われていくなか、企業としてはどのような対策ができるのでしょうか。労働力人口の推移予測とともに、今からするべき準備について解説します。

労働力人口の現状と予測

日本の人口減少が当初の予測を上回る速度で進行しているというニュースが、社会に大きな衝撃を与えています。少子高齢化が進むなか、労働力人口はどのような状態にあるのでしょうか。

長期的な予測

「労働力人口」とは満15歳以上で、労働する意思と能力を持った人の数を表しています。よく似たものに「生産年齢人口」がありますが、こちらは15歳以上65歳未満の人口です。

いまの社会では65歳を超えて働くことも普通となり、生涯現役をめざす人も少なくありません。そのため「労働力人口」のほうが、実質的な国の労働力を示しているといえます。

国内人口全体を見たとき、2008年の1億2,808万人をピークとして減少に転じています。国立社会保障・人口問題研究所によると、2065年の日本の総人口は8,808万人まで落ち込むと推測されます。

この条件下における労働力人口について、2017年にみずほ総合研究所が予測を発表しました。それによると、2016年時点で6,648万人の労働力人口が2065年には約4,000万人、約4割の減少と推測されているのです。

短期的には安定

一方で2008年以降、人口が減り続けているにも関わらず、労働力人口は2012年から増加傾向にあります。

総務省による2019年の労働力調査では、完全失業率は2.4%と前年と変わりませんが、完全失業者数は4万人減少しており、10年連続で減っているのです。2019年の平均就業者数は前の年から60万人増え、こちらは7年連続の増加です。

要因となっているのは、女性や高齢者の労働への参加が増え続けていることです。男性の就業者と比較すると伸び幅が大きく、今後もこの傾向が続くと見られます。

この先しばらくは極端に労働力人口が低下するとは考えにくいため、短期的には安定しているといえます。

各層の労働力の掘り起こしがカギに

しかし、人口の減少傾向は現実問題として避けられません。

2020年代半ばまでは現在の労働力人口が保持できるとの予測もありますが、そのためには女性や高齢者を含めた潜在的な労働力の掘り起こしがカギとなります。

実際に60歳以上の就業率は、2002年以降上昇し続けており、また70歳以降も働く意志を持つ高齢者は8割にもおよびます。

2017年総務省「労働力調査」では、女性労働力人口は5 年連続の増加となっており、労働力人口総数に占める割合は 43.7%です。みずほ総合研究所の予測によると、かりに女性の労働力を男性と同等まで引き上げられれば、2065年の労働力は57.2%と2016年と遜色(そんしょく)ないものにできるとされています。

生産年齢人口に対する労働力人口の比率が現在のままであれば、労働力の激減は免れません。しかし、近年は非労働力人口が減少傾向にあり、希望が見えます。非労働力人口は、満15歳以上の人口のうち就業していない人の数です。これには病気などの理由で就業できない人の他、自分の意志で就職していない人が含まれています。

非労働者人口のうち働く意志を持ちながら求職していない人は、2018年時点で331万人(総務省統計局調べ)。これをいかに減らしていくかによって、日本の未来が変わることになりそうです。

労働力人口の変化に立ち向かえる企業となるための課題

労働力人口の減少という未来予測に対し、企業として何を課題とすべきなのでしょうか。

社会的信頼の維持

企業として存続していくためには、社会的な支持を得なければなりません。本業についての高い評価を獲得する努力は当然ですが、顧客・従業員を含めた社会から、信頼するに値する企業として認められる必要があります。

そのためには常に公正で透明性のある、企業姿勢を示していくことが重要です。仕事を確実にこなすビジネスパーソンの集団の母体として正当な報酬を稼ぎ出し、収支の流れを社会に向けて明らかにしていくのです。

また企業として、地域や社会への貢献も忘れてはなりません。社会で果たせる役割は何かを考え続けながら、そのときどきにできる手段を尽くしていきましょう。

生産性の向上

日本の労働生産性は、2018年時点でOECD 加盟 36 か国中 21 位という低いレベルにあります。

労働力人口が減少する時代にあって、ここでなんとか改善していかなければ将来が見えません。企業内でも非効率の排除に尽力し、一人ひとりの稼ぐ力を向上させることをめざす必要があります。

無駄な作業や業務を見直し、時間のロスをなくす、年齢や役職にとらわれない、柔軟な配置で適材適所を行うなどは、いますぐにでも着手できるでしょう。

社内コミュニケーションを促進し、意思伝達を円滑化することも生産性の向上につながります。

どのような分野の事業であれ、IoTやAIといった先進テクノロジー・ツールを上手く使いこなせれば、時間短縮や人手の削減効果が得られます。企業規模に関わらず、最新情報を活用していく姿勢が求められます。

ヒューマンスキルの最大活用

企業が人で成り立っているのはごく当たり前のことですが、いまだにその事実について深く理解をしていない経営者もいます。従業員は企業の重要な財産であり、利益を生み出していくためのリソースととらえなければなりません。

個人の資質や人間性を重視し、最大限のパフォーマンスを引き出せるようにするために、何が必要かを模索していきます。オフィス環境の改善を行い、快適で効率性の高い職場を提供するのは、企業の役割です。

若手からベテランまですべての層でのスキルアップ促進に向け、不足している部分のリサーチを実施し、教育体制を整備しましょう。

労働力人口の変化に備える準備

労働力人口の変化に備えるために、企業が実施できる準備について見ていきましょう。

雇用の多様化

労働力人口減少に備え、雇用に対して柔軟な思考が求められるようになります。

外国人材、未経験者、女性・高齢者といった幅広い層についての雇用を検討し、各層に必要となる教育制度の整備をしていきます。

先入観を捨て、多角的な視点を持てば、思いがけない人材の発見につながる可能性もあります。

人事制度・評価システムの見直し

離職を防止し、雇用を維持していくためには、これまでの人事や評価に不備がないかチェックしていく必要があります。

単純に労働時間を評価基準とするのではなく、企業への貢献度やタスク遂行率の視点から考えてみるのもひとつの方法です。

評価システムの見直しにより、社員のアイデア創出が増加したりモチベーションの維持につながったりする効果も期待できます。

休暇制度の充実

企業に対して有給休暇取得義務化が開始されました。

必要なときに十分に休むことができるのは、人間が働くうえで重要な条件です。

働き方改革が推進されるなかで、仕事も私生活も充実させるワークライフバランスという考えが浸透してきました。企業はこれをしっかりと理解し、具体策を示していかなければなりません。

集中と緩和のバランスが得られることで、個々の社員の能力を十分に発揮させられます。有給の消化促進を施策の軸としてとらえ、休暇制度の充実を進めていく必要があります。

働き方の多様性

働き方の多様性を認めることで、各個人の事情に合わせたワークスタイルにより、労働力を確保できる可能性もあります。

業種によっては導入が難しい場合もありますが、リモートワークやサテライトオフィスの設置、時短勤務やフレックス制度を組み合わせることで、多様な勤務を実現する例も多数見られます。

補助金・助成金の活用

労働力人口減少への対策を実施したくても、現実的に企業側に余裕がないというケースは少なくありません。国では中小企業の雇用や事業継続・拡大に向け、さまざまな補助金や助成金を提供しています。

これまで見てきたように労働力確保の課題解決には、雇用対象の拡大や教育体制の整備、先進技術の活用などがあります。そうした施策を実施するにあたり、人材育成・人材雇用・IT導入に関する補助金や助成金が大きな力となるでしょう。

意識を変え実行できない会社は滅亡する

労働力人口の減少は急激であるとはいえませんが、じわじわと確実に進行していくことは間違いありません。企業の将来を考えたとき、いまから改善できる部分はたくさんあります。労働力を確保していくためには、外国人雇用や女性、高齢者雇用など幅広い雇用計画が有効です。それにしたがって、教育制度を整備するといった方向性も定まります。魅力のある会社には、自然に人がひきつけられるものです。企業としてのあり方次第で、人材不足から脱却することもできます。変化を見定めながら正しく対応していくためには、雇用側の意識改革も必要になります。管理する側・される側を問わず、全社的なヒューマンスキルの向上をめざしていきましょう。

 

参考:

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