人材不足はいつまで続くのか?雇用市場の変化と対策

諸国に先がけて超高齢化社会に突入した日本。労働力人口は先細りとなり、どの業界でも慢性的な人材不足が続いています。先進技術の活用や外国人労働者に対する規制の緩和など、さまざまな取り組みが進められていますが、いまだ大きな効果は見えていません。

売り手市場が続く雇用状況のなかで、自社が求める人材の確保はますます難しくなっています。この先人材不足が解消される見込みはあるのでしょうか。現在の雇用市場の状況を確認しながら今後の変化について読み解き、企業が考えるべき対策を解説します。

2020年以降の日本の雇用

人手不足という声は社会のあらゆる場所から聞こえてきますが、実際に雇用の現場ではどのような状態となっているのでしょうか。

企業の雇用意欲と採用状況

リクルートワークス研究所が201812月に行った、2020年新卒者を対象とした採用見通しに関する調査では、「大学・大学院卒者の採用が前年より増える」企業が13.8%と、採用意欲の高さが見えています。この傾向はここ数年変わらず、すべての業種において「増える」が「減る」を上回っており、採用への積極性がうかがわれます。

東京商工会議所が都内の飲食店1,000社に対して行ったアンケートでも同様に、正社員、パート・アルバイトを問わず「増やしたい」が「減らしたい」を大きく上回りました。企業側では強い採用意欲を持っていることがわかります。しかし一方で「人材が集まらない・少ない」という回答が半数以上あり、思うような採用ができていない現状です。

大手企業であっても、その大半が新卒採用に危機感を持っているという調査報告もあり、人材採用のニーズに対しての充足が得られているのはごくわずかであると考えられます。

(※新型コロナウイルス発生前のリサーチによる)

日本全体の労働力の変化

すでに日本では人口減少が始まっていることは周知の事実です。2008年の12,808万人をピークに2050年には1億人まで減ると見られています(「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」平成309月経済産業省資料より)。人口減少にともない、生産年齢人口比率の減少が加速。2030年代には生産年齢人口の減少幅と高齢者の増加幅の差がもっとも大きくなり、以降はすべての世代の人口が減少すると推測されているのです。

このように長期的には生産年齢人口は減少する見込みですが、近々の労働力人口は安定的と見られています。その理由としては、女性や高齢者の就業者数の向上があります。特に非正規雇用では女性・高齢者の増加が目立っており、女性は2015年以降、正規雇用においても増加傾向が見られます。

また、厚生労働省の統計から計算すると、外国人労働者についても2017年には2008年の約2.7倍の伸びとなっており、着実に増加し続けています。

売り手市場か?買い手市場か?

人口の減少から空前の売り手市場と呼ばれる採用の現場ですが、はたしてその実態はどのようなものなのでしょうか。

人材不足はどこで起きているのか

人材不足の声は社会全体から聞かれますが、そのなかでも特に顕著な業界は、建設業、小売業、飲食店・飲食サービス業、医療・福祉・介護事業などです。これらの業界では求人が活発に行われ、雇用自体は増加していますが、それでも人手が不足する状況にあります。

働き方改革の推進により長時間労働への目が厳しくなるなかで、週間平均労働数は短時間化しています。短い時間で多くの人が働く形態が一般化する業界では、労働者の頭数不足が発生している状態です。

一方で生産に対して雇用が多すぎ、かつ労働生産性の低下している業種では、余剰人員ありという様子も見られます。

人手不足の筆頭にも挙げられる運輸業・郵便業は、ほかの業種とは異なる事情があります。社会の状況変化に関わらず求人数は常に一定していますが、若手の入職率が低く、労働者の高年齢化が進んでいます。高稼働でありながら、人材不足に悩まされているのが現状です。

業種や事業者規模によって異なる雇用市場バランス

人材不足が叫ばれるなかで、買い手市場が続く職種もあります。

2019年の有効求人倍率平均は1.6倍、正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.13倍(201912月値)でした。一方で「一般事務の職業」「会計事務の職業」などの事務的職業の有効求人倍率は約0.5倍で推移しており、買い手市場が継続している様子がうかがわれます。

また201912月の新規求人状況で見ると、全体数887,713人のうち29人以下の規模が556,219人、3099人以下が209,433人、1,000人以上の事業規模では12,025人のみとなっています。求人の中心は中小企業であり、大企業への就職は依然として狭き門といえるでしょう。

このように雇用については、業種や事業者規模によって市場のバランスが変わります。社会全体で人材不足であることには変わりありませんが、雇用市場はさまざまな要因で変化していきます。

人材を求める企業としては、常に市場の動きに注目することが大切です。

人材の不足に関して考えるべきこと

人材不足について、企業が考えるべきこととは何でしょうか。

不足から余剰に転じるカギは「景気後退」

日本の人口推移を見ても、労働力の主体となる層が減少していくことは明らかです。現在の人材不足がいつ解消されるのかは、好ましい要因が見つからず不明確であるといえます。

もし近々人材が余剰に転じるとすれば、景気後退という状態が考えられます。景気が悪くなれば企業は雇用に消極的になり、不足感が軽減する可能性があります。

景気に左右されず、常に必要とされる分野や、景気不振のときにチャンスを得る業種であれば、人材雇用への動きは変わらないでしょう。

企業には経済の変動や景気が自社事業に与える影響を予測しながら、敏感に対応していくことが求められます。他社の採用活動の動きが鈍れば、逸材を確保できる機会が生まれます。

状況に合わせた柔軟な思考が必要

一般的に考えれば、人材確保の厳しさはしばらく続くと見られます。企業にはそれぞれの取り組み方を工夫し、よりニーズに合った人材を獲得していく姿勢が重要です。

先を予測する

変動の激しい社会にあって今後の状況変化を予測することは非常に難しく、柔軟に対応する姿勢こそが時代を乗りきるポイントです。既存の慣習や考え方から一歩先を見すえてみるとよいでしょう。

例えば、IT技術を用いて人材不足の代替策を検討する、人材雇用の多様化を促進するなどが必要です。高齢者や女性の活用、外国人材の受け入れも有効策となるでしょう。

採用の枠を広げる

最初から採用の枠を狭めてしまわないよう、異業種からの転職者に目を向けるのも有効な手段です。異なる視点や知識、経験が自社にとって思わぬ効果をもたらす可能性もあります。

せっかく雇用した人材とのミスマッチングは、双方の時間と労力を無駄にします。コスト面の損害を回避するためにも、事前の対策が大切です。採用したい人材について徹底したビジョンを作成し、どこを軸にして採用の基準とするのかを定めておきます。

すべてに完ぺきな人材を採用することは難しいかもしれませんが、自社のニーズを堀り下げることで必要十分な人材の確保につなげられます。

社内に目を向ける

人材不足の解消を外にばかり求めず、今ある社内の人材を活用することに目を向けると新たな道が開ける場合もあります。事業運営の見直しを行い、余剰部門から不足部門へ人員を充当する、効率性の悪い部門を廃止して必要な部署に人員を配置するといった方法も、検討の価値があるでしょう。

企業のあり方は、時代の変化に合わせて変えていかなければなりません。人材雇用についても、常に柔軟な思考を持ちながら対応していくことが求められます。

まとめ:今後も人材不足は継続する

日本の状態を見れば、今後も企業で人材が余るということはないと予測されます。どの企業でも将来を担う優秀な人材の雇用を希望しており、獲得競争は激化するでしょう。一方で雇用市場の状況は、業種や規模によって異なります。必要な人材を雇用するためには、企業側の工夫と受け入れ姿勢がポイントといえます。自社の魅力を見出し、働きがいのある職場を提供することが、採用市場で勝ち抜く力となります。自社にとって本当に必要なのはどのような人材なのかを追求し、外国人を含めた人材に対する広い視野を持てば、人材不足の解消への期待が見えてきます。

参考:

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