パワハラになってしまう言葉は国によって違う?留意したい外国人材への対応

パワハラになってしまう言葉は国によって違う?留意したい外国人材への対応

国内の労働人口が減少の一途をたどるなか、外国人労働者への期待が大きくなってきています。日本人と異なる文化を持つ外国人に対しては、パワーハラスメント(パワハラ)と受け取られる言動に特に注意する必要があります。働き方改革の推進とともに職場のハラスメントに関して、非常に厳しい視線が注がれるようになりました。無意識に相手を傷つけていることもありえます。日本人・外国人それぞれに対するパワハラの例を見ながら、慎むべき言動について解説します。

職場におけるパワハラとは

パワーハラスメント(パワハラ)という言葉は意外なことに、2000年代に日本のコンサルタント会社が提唱した和製英語です。職場のいじめを指す英単語は存在しますが、パワハラという言葉には日本の職場特有の問題が潜んでいると考えられます。職場におけるパワハラの定義について見ていきましょう。

パワーハラスメントの定義

厚生労働省がまとめたパワーハラスメントの定義では、以下の3要素がパワハラ行為の概念とされています。

  1. 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
  2. 業務の適正な範囲を超えて行われること
  3. 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

この定義によると地位や人間関係などの優位性を背景に、精神的・身体的苦痛を与えることがパワハラとみなされます。

一般的には上司・部下、先輩・後輩などの立ち位置の違い、また知識や技能のレベルの違いなどから発生するケースが多く見られます。

しかしなかには、派遣社員による嫌みや反抗によって担当上司が悩まされるなど、人材不足という社会背景を受けて立場が逆転したパワハラ行為も存在します。そうした意味では「優位性」がときとして変化し、誰もが被害者・加害者になる可能性があるのです。

新人社員が上司をパワハラで訴えるという話はよく耳にしますが、業務上の適正範囲を超えない指示や注意はパワハラにあたりません。多少厳しい物言いがあったからといって、すべてがパワハラ行為ではない点が解釈を難しくしています。

パワハラの種類

パワハラ行為の種類としては、主に以下があげられます。

  • 暴言・乱暴な行為
  • 無視・放置
  • 執拗(しつよう)な非難
  • 威圧的・高圧的な態度
  • 無理・無駄な業務の強要
  • 業務以外の強要

感情に任せた暴言は、職場における社会人として人間性を疑われるものです。足蹴りや殴打など、身体的な暴力は言うまでもありません。

適切な業務指示を与えない、質問に対して無視をするのもパワハラとみなされます。相手の落ち度をしつこく責める、相手を見下すような言動をとるのも同様です。客観的に見て能力以上の業務を押しつけたり、意味のない作業を強要したりするのは、相手の精神的負担となり、徒労感から働きがいを喪失させます。

また業務外の私用をいいつけるといった行為も、パワハラにあたります。

日本人労働者へのパワハラの例

パワハラはどのような職場でも日常的に起こりうる事象です。具体的な例を見ていきましょう。

実際にあったパワハラ事例

パワハラの言動としては次のような例があります。

  • 言葉による暴力で精神的なダメージを与える

「存在が目ざわり」

「やる気あるのか?」

「使えない」

「もう辞めたら?」

「仕事できなくても休憩はとるんだな」

「おまえの代わりはいくらでもいる」

  • 意図的な行為により職業的な苦痛を与える

・あからさまな仲間外しや隔離など

・大量の仕事を突然一晩で仕上げるように要求する

・役に立たない業務(紙を破るなど)を与え続ける

パワハラの裁判例

  • 時間外労働と上司から長時間にわたる叱責(しっせき)を受けたことにより脳梗塞を発症

業務が原因で出血性脳梗塞を発症したと認められ、労働者災害補償保険(労災保険)支給が成立した例です。時間外労働時間は疾病発症前に徐々に増加し、直前1ヶ月は80時間にも達していました。

加えて、上司である部長が該当の人物を起立させたまま叱責していたことがあり、回数も1ヶ月に2回以上、2時間を超えたときもありました。

こうした肉体的疲労と精神的な負担が多大なストレスとなり、脳梗塞との関連性があるとして申し立てが認められました。パワハラが、労働災害を引き起こした可能性のある例として知られています。

  • 担当業務を外し隔離

高等学校勤務の女性教諭が、授業や担任から外され4年6ヶ月にわたって別室に隔離、自宅での研修を強要された事例です。

一時金の不支給や賃金の据え置きなどの違法性も問われ、精神的苦痛の賠償金として学校側に600万円の支払いが命じられました。

判決のポイントは、外形的には業務命令の一環として行われているように見えても、根本の原因として、女性教諭の労働組合活動を嫌悪していたという不当な動機が認められたことです。学校側の業務命令の逸脱が追及され、パワハラ行為にあたることが明示されました。

外国人労働者へのパワハラの例

外国人労働者に対しては、日本人との文化の違いからパワハラになる可能性が高くなります。また差別的な言動により、相手やその国を侮辱するといった行為も多く見られます。

文化の違いがパワハラとみなされる原因になる

日本人同士では問題にならないことでも、文化の違いによってパワハラ行為とみなされる場合があります。具体的には以下があげられます。

  • 宗教
  • 個人的な話題(年齢・プライバシー)
  • 飲み会の誘い

日本人同士では、相手の宗教を意識することがほとんどありません。しかし、宗教によってはとても戒律が厳しく、センシティブな問題とみなされる場合があります。宗教について尋ねただけでも、ハラスメントとして受け取られるケースも多いようです。

同僚として親しくふるまう場合にも、注意が必要です。女性に一切触れることが禁止されているという宗教もあるため、軽率な行動は控えなければなりません。

多くの外国人が日本に来て驚くことが、プライバシーに関する質問です。女性に対して年齢を尋ねてはいけないことはだいぶ知られてきました。家族構成やパートナーの有無についても、よほど親しくならなければ聞かないほうが無難です。

また飲み会に誘う習慣も、海外では一般的ではありません。公式の歓迎会を除き、上司が無理に誘うのはパワハラと受け取られるおそれがあります。

明らかなパワハラにあたる具体的な例

労働力を補強する貴重な人材として迎え入れながら、職場では信じられないようなパワハラ行為が存在します。

下記は外国人労働者のサポートにあたる民間非営利団体に寄せられた、実際のパワハラの事例です。

  • 連日「バカ、アホ」、「死ね」、「国へ帰れ」などの暴言を浴びせられた
  • 「中国人はお金のことばかり言う」と言われた。
  • 「職場では母国語を話すな」と言われた。
  • 日本人従業員との会話を禁じる
  • 勤務時間外に社長にマッサージをさせられた
  • 宗教上の理由から着用しているスカーフ(ジルバブ)をめくられた
  • トイレが「日本人用」と「中国人用」に分かれており日本人用を使うと叱責を受ける
  • 残業代を要求したところ「お金がほしいならバーで働け」と言われた
  • 来日前の契約では寮の一人部屋の利用が約束されていたが、「インドネシアでは大家族だからいいでしょう」と言われて複数人同居となった

こうした例では、人格否定や人権侵害にあたるような言動が各所に見られます。ハラスメント行為は相手の立場や気持ちを理解する能力に欠けるところから発生しますが、それは日本人相手でも外国人相手でも変わらないでしょう。

パワハラ行為を職場から追放するために

社会構造が激変するなか、どの職場も人材不足が不安視されています。パワハラ行為によって貴重な人材を失うようなことがあれば、企業の大きな損失となりかねません。パワハラを職場から追放していくためには、どのような手立てが必要なのでしょうか。

社内教育の徹底

パワハラは当事者の無自覚によって発生することもあります。また、「これくらい大したことではない」という加害者側の認識不足も、パワハラを助長させます。

パワハラ行為を具体的に示しながら、個人によって受け止め方が異なることを、全社的にしっかりと理解させていかなければなりません。

全社員層に向けた研修や意識調査を実施し、パワハラ追放のための教育制度を確立することはその1つです。多様性の受容は、現代の企業にとって必須な要素です。他者との違いを認め、尊重する意識を社員一人ひとりに根付かせていかなくてはなりません。

個人の意見を示せる場を提供する

被害者側が上司や同僚には話せないことを相談できる窓口を複数提供し、パワハラが深刻化する前に解決できるシステムを整備していきます。

話をしたことによって仕事に差し支えることがないよう、配置換えといった対策を適宜すみやかに実施することも重要です。また、パワハラを公表したことへの報復行為を防止するため、ルール策定を行い、違反者には厳正な対処が行われることを周知する必要があります。

まとめ:悪意がなくてもパワハラとなるリスクがある

パワハラは、日本人同士でも業務に支障をきたすおそれのある深刻な問題です。外国人労働者の場合は、悪意がなくても文化の違いによってパワハラとなってしまうリスクがあります。異なる文化背景への意識を持ち、相手の国の文化を尊重する姿勢を徹底しなければなりません。日常業務のなかで人格否定や侮辱の言葉が発せられていないか、常日ごろから注意をうながしましょう。特に差別的発言に対しては会社全体で、厳しい対処が求められます。

 

参考: