介護業界における外国人実習制度のねらい・活用状況・展望

介護業界では、外国人技能実習制度を利用した外国人雇用が可能です。人手不足に悩まされている介護業界の企業においては、雇用の選択肢として活用できる制度と思われるかもしれません。ですが、制度について把握しきれていない方も少なくないでしょう。今回は、介護業界における技能実習制度の概要や課題、展望について解説します。

介護業界における外国人技能実習制度とは?

介護業界における外国人技能実習制度について解説します。介護職には業界特有のリスクが存在するため、固有の要件が定められています。

そもそも、技能実習制度とは?

技能実習制度とは、途上国の開発援助のために外国人労働者を日本国内の職場に受け入れることができる制度です。雇用可能な期間は最長5年間で、日本の技能や知識などを本国に移転することを主な目的としています。

技能実習制度は1993年に新設され、介護職は2017111日より技能実習制度の対象職種となりました。

介護における技能実習制度

技能実習制度の主な目的は、技能の移転です。したがって、介護業界においても、技能実習制度の趣旨に添うという条件のもとで、制度を利用できます。

制度の趣旨に添うために、企業側はどのような体制で外国人労働者を迎え入れればよいのでしょうか。それには、厚生労働省が公表する以下の3つの注意点が参考になります。

  • 介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージにならないようにすること

人手不足を解消するためではなく、日本の介護の技術や知識を途上国に伝えることを目的として外国人を雇用する必要があります。

  • 外国人に日本人と同様の待遇を処すこと

外国人を「安い労働力」として、人件費削減目的で雇用することは、技能実習制度の趣旨と合致していません。適正な待遇で雇用することが欠かせません。

  • 介護のサービスの質を確保し、利用者に不安を抱かせないこと

介護サービスは、利用者の生命や身体の安全・安心に直結するサービスなので、技能実習制度を利用する際にもサービス面の品質確保が強く求められています。また、介護職には利用者とのコミュニケーションが不可欠であるため、相応の日本語能力も必要です。

技能実習生の目標とするレベル

技能実習生は、技能実習評価試験を受験しなくてはなりません。

  • 1号実習修了時まで(1年目)

技能実習評価試験「初級」の合格が目標とされています。

  • 2号実習修了時まで(23年目)

技能実習評価試験「専門級」の合格が目標とされています。

  • 3号実習修了時まで(45年目)

技能実習評価試験「上級」の合格が目標とされています。

介護業界の技能実習制度の固有要件とは?

介護は、人命に関わることや高度な接客が要求されることから、技能実習生として働く外国人にもほかの業界とは異なる固有の要件が設定されています。

技能実習生に関する要件

介護業界にて実習生として従事するためには、外国人本人に以下の要件が設定されています。

  • 高い日本語能力

1号技能実習生には、日本語能力試験(JLPTN4合格、またはN4合格と同等の日本語能力、第2号技能実習生には従来はN3合格、またはN3合格と同等の日本語能力が要件とされていましたが、20206月現在、要件は撤廃されています。ただし、2号技能実習生に移行する際にN3に合格していない外国人労働者を雇用する際には、受け入れ事業所がN3合格に向けた日本語学習を支援しなければならない、という条件が付与されています。N4は、基本的な日本語がだいたい理解できる程度、N3は日常的な日本語がある程度理解できる程度のレベルです。

1号技能実習生であっても「N3合格以上」が望ましいとされており、技能実習2年目以降はN3が要件とされています。

  • 介護業界での職歴

雇用する外国人は、本国における介護業界での職歴が必要とされます。具体的には、高齢者もしくは障がい者介護施設での就労、看護師資格の保有、外国政府により介護士認定を受けていることなどが、職歴に該当します。

受け入れ団体に関する主な要件

介護業界では、外国人労働者本人だけではなく、受け入れ団体側にも条件が設定されています。ここでは主な条件を紹介します。

  • 実習実施者に関する要件

技能実習生を雇用するための要件は、介護業務が現に行われている事業所であること、経営がある程度安定していること、設立後3年を経過していることです。

  • 事業所の体制に関する要件

技能実習指導員のうち、最低1人以上は介護福祉士の資格や同等以上の専門知識および技術を持っていることが要件です。

  • 技能実習生の人数枠

技能実習生の受入れ人数は、事業所単位で一定の割合以下に抑えなければなりません。

一般の実習実施者・・・(1号)常勤介護職員の20分の11号・2号の合計)常勤介護職員の20分の3

優良な実習実施者・・・(1号)常勤介護職員の10分の11号・2号・3号の合計)常勤介護職員の5分の3

技能実習に関する要件

技能実習生に対して、講習の実施を行うことも必要です。

  • 入国後講習の実施

入国後講習として、技能実習期間の6分の1以上の期間の講習が必要です(本国にて一定時間以上の講習を受けた外国人労働者は12分の1以上に軽減されます)。

講習内容は1:日本語、2:日本国内での生活一般に関する知識、3:技能実習生の法的保護に必要な情報、4:介護に関する技能などがあります。このうち、日本語と介護については、最低限必要な講習時間が設定されています。

  • 日本語講習・介護の技能に関する講習の実施

入国後講習のうち、日本語講習を240時間以上、介護導入講習を42時間以上行うことが要件です。また、日本語能力試験N3合格者の場合、日本語講習は80時間以上が要件です。

介護業界での技能実習制度の課題と展望

介護業界で技能実習制度を効果的に活用するための課題と、今後の展望について解説します。

技能実習生受け入れ企業側の課題

技能実習生を受け入れる企業側には、2点の課題があります。

  • 受け入れ企業側にコスト負担が生じること

技能実習生に対して、日本人と同様の賃金、住居の手配や労働環境の整備、研修の実施などが必要なことを踏まえると、受け入れ企業は日本人を雇用する以上のコスト負担が生じます。

  • 継続的な技能実習生の確保の難しさ

5年以内に技能実習生が帰国することになりますが、多くの実習生の本国である中国やASEAN諸国では、まだ日本ほど介護施設が充実していません。帰国後に、学んだ知識や技能を生かして働ける環境が少ないことから、技能実習生にとってのメリットが見出しにくく、実習生を確保しづらくなってしまうことが考えられます。

介護業界での技能実習制度の展望

現状は、技能実習生が帰国後に技能を生かせる場面が限られているものの、ASEAN諸国も高齢化が進行しています。

また、介護業界においては、アジア諸国に介護施設を増やしている傾向があります。今後は現在以上に意欲を持った外国人が技能実習生の制度を利用することが期待できます。

介護業界でも技能実習制度が利用できるようになったことや、国内の少子高齢化が加速している状況から考えても、よりいっそう外国人雇用が進むことは間違いないでしょう。技能実習生が働きやすい環境や法務の整備、住環境の整備などが重要です。

まとめ

介護業界でも、技能実習生を活用できるようになりました。介護サービスは、利用者の生命や安全に大きく関わるため、介護業界固有の要件が設定されています。主な要件は以下の4つです。

(技能実習生側)

  • 高い日本語力
  • 介護業界での職歴

(雇用者側)

  • 3年以上運営している、経営の安定した事務所であること
  • 介護専門職における技能実習生の割合を一定以下に抑えること

これらの要件を満たすことで、外国人を「技能や知識の移転のため」に雇用することができます。

現状は、技能実習終了後に本国で活躍できる場所が少ないことやコスト面の課題がありますが、今後ますます介護業界で技能実習制度が活用されそうです。

参考:

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